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2014年10月2日

Rake×岩沼市長
「音楽を楽しむ心の余裕が、未来を明るく照らす」


 
Rake 氏(以下、Rake):
東日本大震災から3年半が経ち、東北観光親善大使に任命していただいて、今年は宮城県内の沿岸部にある市町を中心に無料ライブを企画して、足を運んでいます。
僕は宮城県生まれで、いまも宮城県に住んでいるので、この3年半、どういった形で宮城県、東北を盛り上げていけるのかを模索していたんです。そのタイミングで、宮城県の皆さんから、自分たちの住む街に歌いに来てほしいといったメッセージをいただいて、今回企画したライブをやることが自分の運命といったら大げさかもしれませんが、いま音楽活動をするうえでの心の支えとなっています。
 
岩沼市 市長 菊地 啓夫 氏(以下、菊地市長):
岩沼市の会場となっている市民会館は、ちょうど仮設住宅の真ん中にあるので、いろいろな方々がライブを聴きにきてくれるのではないでしょうか。それとも、やっぱり若い方々が中心になるのかな?
 
Rake:
実は今日の午前中、ある仮設住宅にお邪魔して、集会所に集まっていた年配の方々の前でミニライブをさせていただいたところ、皆さんに耳を傾けていただいて、とてもうれしかったですね。
 
菊地市長:
気仙沼や石巻、南三陸など、今回のライブは、震災での被害が甚大だった市町で開催しているんですね。
 
Rake:
岩沼市の海岸沿いも甚大な被害だったと聞いています。僕は野球少年だったので、岩沼海浜緑地の野球場で少年野球をやった思い出がたくさんあります。今日、足を運ばせていただいたんですが、昔と様子が違っていて、ちょっと切ない思いをしました。いまは千年希望の丘ということで、復興へ向けての記念碑がありましたね。今日も何組かの方々がいらっしゃっていて、ここまで津波がきたんだと話していましたね。


 菊地市長:
そのあたりに集落があって、津波で多くの方々が亡くなり、岩沼市では一番被害の大きかった地域なんですよ。
 
Rake:
住宅の外壁と基礎の部分がのこっているところがありました。
 
菊地市長:
震災遺構として、残したんです。
いまは新しい住宅をどんどん建てています。先ほど、仮設住宅にも足を運んでいただいたとお話がありましたけど、あそこで暮らしている皆さんも、集団移転に参加するので、比較的未来は明るいと思っています。
この間は千年希望の丘で草取り植樹祭というイベントを開催しました。昨年5月に丘で植樹を行ったのですが、一年で草が生茂ってしまったので、その草取りをしようという取組でね。そしたら500人もの方が集まって、ほんの一時間程度で作業を終えることができました。本当に多くの人に支えていただいています。
 
Rake:
木が大きくなるのが楽しみですね。
 
菊地市長:
そうですね。今年までに10万本の木を植えました。千年希望の丘を木々でいっぱいにするためには、あと14万本くらい植えなければならないんですよ。来年5月にも植樹祭を行います。あの丘の土壌の7割くらいは、震災で発生したがれきが埋められてもいるので、ある意味、我々の想いがこもった復興の象徴ともいえますね。
 
Rake:
そうでしたか。あの丘へ行ったら海抜11メートルという表示があったので、ずいぶん高い丘だなぁという話をしていたんですけれど、そういった背景があったのですね。
 
菊地市長:
万が一、また大きな津波がやってきたとしても、あの丘にのぼって逃げられるように。そして木々が、ある程度の波の衝撃を抑えてくれるだろうとシュミレーションしています。
将来的には10km程度の散策道の整備も考えていて、マラソン大会などを開催できたらいいなぁと思っています。
  
Rake:
元々、あの辺りにはサイクリングロードもありましたよね。僕も幼い頃に父に何度か連れていってもらった思い出があります。震災で失われてしまった風景も、また戻ってくるようにと願っています。
 
菊地市長:
仙台空港付近の貞山堀は、東側、つまり海側に幅を拡げる予定で、いまより1.5倍の幅になります。水を満々とたたえると、ボートを浮かべられるくらいの施設になる予定です。土手も、いまより1.5m嵩上げして、幅も拡げます。
千年希望の丘があって、貞山堀の土手があって、その後ろにもう一つ、高さのある道路を整備する予定です。自然景観も大事にしながら、津波への対策も進め、また津波がきたとしても二重三重に守られて、被害が抑えられるとシュミレーションしているんですよ。
完成するまでには、まだまだ時間もお金もかかりますが、復興とあわせて、そうした対策も進めていきたいですね。
ところでRakeさんのライブは、どのくらいの演奏時間になる予定ですか。
 
Rake:
全体で一時間くらい、13曲を予定しています。一日2回公演するのですが、ありがたいことに、たくさんの方から事前の申込みをいただいているようです。
震災直後は、衣食住といった生活に直結するようなものが最優先とされていて、皆さん非常に張り詰めた意識の中にあったと思いますが、あれから3年半経って、ようやく気兼ねなく音楽を聴けるような心のゆとりが出てきたというような話も聞きます。それで、こうして僕が歌いに行くと、生の音楽を聴くのは震災以降、初めてだというコメントもいただきました。音楽は、娯楽や趣味の一つですが、その娯楽や趣味こそが、人が人として生きていくスパイスになっているのだと思います。それを皆さんに少しでも届けていけたらと思っています。
年配の方は僕の名前も顔も知らないと思うんですけど、行くと、「おにいちゃん、歌うんだ。いいねぇ」なんて言って喜んでくださるから、有難いですし幸せですね。
 
菊地市長:
ミュージシャンやスポーツ選手の皆さんにいらしていただいても、震災直後は市民の皆さんの心にまだ余裕がなく、戸惑いをみせていたところも多少あったのは事実です。でも3年半経って、市民の皆さんが将来を展望する心の余裕も生まれてきて、改めて音楽やスポーツを楽しむことができているようですね。
ところでRakeさんは東北観光親善大使ということですから、宮城県はもちろん、他の東北各県についてもPRしているんですか。

 
Rake:
そうです。
東北の方々は、少なくとも高校の修学旅行などで関西地方へ足を運ぶ機会もあると思うんですが、逆に関西の方々は東北へ足を運ぶ機会は非常に少ないと伺いました。東北は、とても遠くて、イメージが湧かないとおっしゃっていた方も。
僕は音楽活動を通して日本全国へ足を運んでいるので、関西や九州など、東北地方から遠い地域にお住まいの方々へも、ぜひ東北へ一度は遊びにきてください、と呼びかけていきたいですね。
何しろ東北にはゆったりとした自然に抱かれていて、水もお米も、魚介類も、何もかも美味しい!2020年の東京オリンピック開催時には、世界の方々に東北へも足を運んでいただけるとうれしいですよね。
 
菊地市長:
東北の人は、東京や関西の人に比べると、比較的大人しくて控えめで、自分たちの地域の良いところをアピールするのが、あまり上手じゃないのかもしれませんね。本当は、Rakeさんがおっしゃってくださったように、良いところがたくさんあるんですけれどね。
東北の中心都市である仙台は、政令指定都市にもなっていて非常に近代的ですし、私たちの岩沼市も空港もありますし、道路の整備も進んでいて、東京や関西方面からいらっしゃる方々にとっても、とてもアクセスがよいところだと思いますから、ぜひ、多くの方々に遊びにきていただきたいですね。

 
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